複数の自治体が連携して取り組む共通テーマ「地域商社」の紹介です。地域おこし研究員の活動を通じて、期待される成果を紹介します。(担当:土井隆(慶應義塾大学SFC研究所所員・長島町))
地方の資源を最大限活かし、「稼げる」産業をつくることが地方創生で必要とされている。自らの資源を再定義し、マーケットを正しく認識した上で、戦略的に地域を売り出していかなくてはならない。
消滅可能性の高い地域によっては一次産業中心の経済で支えられている場合が多く、より付加価値をあげた生産体制をつくることで収益性を高めることが求められる。また、BtoB中心の既存の流通に依存していたところも多く、BtoCを対象とした施策を行うことによって、市場価格の向上、収益性の増大が見込まれる。
地域商材の売り先は縮小傾向の国内にとどまらず、地の利を活かした海外市場にも展開していくことが期待される。
地域の事業者と大学が連携した実践の場の創造
地域の事業者と連携し、ブランド調査・流通の課題などを研究調査した上で、商品開発や施策の提案などを行っていく。
地域間の協業したモデルの開発
地域商社に取り組む他地域と連携して、商品開発や施策をより効率的に行う。たとえば、ブリを特産品する地域と大根を特産品とする地域が連携して、ぶり大根の数詰めを協力して製作し、ふるさと納税の返礼品として送るようなモデルをつくる。
「稼げる産業」づくり
地域商社の事業において具体的な施策を提案し、実行した上で、その活動の効果を定性的・定量的に評価できる仕組みをつくる。たとえば、飲食店を対象とした生産現場をしってもらうための視察ツアーなどを定期開催し、地域の食材を仕入れてもらい、その料理を都市部で提供していく活動などが挙げられる。
「稼げる観光」モデルの創造
漁業中心の町において、養殖生け簀の上での餌やり体験や海上に浮かぶレストランの運営など、地域の資源をつかいこれまでになかった地域の魅力を伝えるツアーなど運営し、稼げる観光モデルを創造する。
雇用の創出
稼げる仕事を地域につくり、その仕事をよく知り、より魅力的に仕事を伝えることで雇用を創出していく。まちの仕事はハローワークなどには掲載されるものの見てほしい人に見られていないこと、また見られても魅力的に伝わらない事が多い。仕事の見える化を進めることが望まれる。
後継者問題の解決
地域によっては、後継者問題を抱える地域も存在する。例えば、転職希望者を募り、仕事の現場を見に行くツアーを開催し交流人口を増やし、その中から後継者を見つける活動などを実践していく。
地域の商品の認知度向上
地域の商材は、それぞれ認知度が決して高くないことが多い。その商材を知ってもらうために、たとえば季刊誌の発行(食べる通信)や、レシピ集の作成(クックパッド)などがあげられる。それらの活動を大学と連携して推進していく。
商品開発とマーケティングの実施
地域のものを使い、マーケティングを行う。具体的には、塾生の発案と教員の調査研究により実現した富士吉田市の「慶應の水」などが挙げられる。