Column

人はどのように、学び、動き出すのか?
―地域おこし研究員OB・OGの現在地③―

新しい仕組みを地域に根づかせていくには、それを動かす“人”の存在が欠かせません。どれだけ優れた制度やプログラムがあっても、関わる人々が主体的に学び、行動しなければ、仕組みは形骸化してしまいます。

では、人はどのように、自ら学び、動き出すのでしょうか?——

今回は、そんな「人の内発的な変化や学びをいかに引き出せるか」という問いに向き合ってきた、2人の地域おこし研究員OBの実践と探究に迫ります。

人が“自ら動く”ための学びの設計とは

貫洞 聖彦(コンサルティング会社勤務)

現在はSFC研究所で研究を継続しながら、コンサルティング企業にて実務にも携わっています。関心を持ち続けているテーマは、「人が効果的に学び、自ら動き出すような機会の設計」。最近は、教育ゲームとして知られる『マインクラフト』の学習効果を定量的に測定する研究を、他大学とのチームで進めています。

地域おこし研究員時代には、ドローンを活用して、地域の県立高校を舞台に、地域における学びのデザインに挑戦しました。地域には様々な課題やニーズがある中で、「本質的なポイントを見極めること」の重要性を痛感しました。自分の関与が終わったあとも継続されている活動や、そこから派生して新たに生まれた取り組みを見るたびに、「本当に必要とされていることは、仕掛けを残せば自然と続いていくのだ」と実感しました。

「能動的に動き学んでもらうには、どのように関わればいいのか?」——今も探求しているこの問いは、地域での経験から生まれたものです。地域おこし研究員時代に導き出した仮説は、「共通の基礎知識の共有」や「本人のニーズに応える体験」を経ることで、人は徐々に自律的に動けるようになる、というものです。

一方的に教えるのではなく、学びの芽をどう育み、そのようなプロセスで土壌を整えていくのか。仕組みや制度の設計において、“人の内発的な変化”をどう後押しできるか。その問いに向き合いながら、今日も現場と研究の両輪で試行錯誤を続けています。

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人が自ら動き出す“目的意識”をどう引き出すか

中村 駿介(人事コンサルタント)

現在は独立し、長崎県壱岐市と北海道東川町で政策顧問を務めながら、民間企業を対象に人事コンサルティングを行っています。

長年人事の実務に携わってきたこともあり、社員の「エンゲージメント」には強い関心があり、一定の感覚的な理解はしていたと思います。ただ、大学院での学びを通じて、より学術的な視点から捉え直すことができ、理論的枠組みをもとに実務に取り組むことができるようになりました。研究は、地域運営組織を対象に、当事者意識を高めるワークショップを設計し実証したのですが、想定以上の成果が生まれて、大きな手応えを感じました。

現在は「目的意識」をテーマにしており、それがどのような性質のものなのか、人はどのように目的意識を持ち行動を変容していくのかについて、役場や企業の組織改革の実践の中で探求しています。

人が内側から動き出すには、外側から制度や目標を提示するだけでは足りません。自らの意志で歩み始めるには、何が必要なのか。理論と実践を行き来しながら、その問いに向き合い続けています。

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人が自ら学び、動き出すには、その内側に火が灯る瞬間が必要です。制度やプログラムは、その“点火の仕掛け”でしかありません。関心や目的意識が芽生えるような関わり方をどう設計するか——そこにこそ、人を動かし、地域を変える鍵があるのかもしれません。

インタビュー・文:松浦生
(公開:2026.04.06)

参考