Researcher

アスリート×地域×研究の相乗効果を目指して

野村 直己(のむら なおき)

山口県山口市出身、2017年3月山口大学経済学部経済学科卒業。大学から始めた陸上競技(800m)で、第84回日本学生陸上競技対抗選手権大会(2015年)第5位入賞、同年の第70回国民体育大会「2015紀の国わかやま国体」では、自己ベスト記録で第3位になる。2017年4月大学院 政策・メディア研究科修士課程入学、慶應義塾大学競走部所属。2017年12月より、新潟県三条市にて地域おこし研究員として活動を開始。

2017年4月 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程 入学
2017年12月 三条市 地域おこし研究員 就任(第3号)
2019年3月 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程 修了
身近なところに、いつも「スポーツ」

両親はどちらも陸上をやっていたんですが、僕の初めてのスポーツの記憶は野球でした。

父は今も高校の教員をしてるんですけど、その高校に行って、球を投げてもらって僕が打つ・・・ということがよくあって。幼稚園の頃には、兄と姉がどちらも水泳をやっていたので自然と水泳をやって、小学校に入ると、二人はすでに陸上の少年団に入っていたので、僕も小学校2年生の1年間だけ陸上をやりました。なぜ1年だけかと言うと、仲の良い友達が3年生から野球はじめると言ったので、「じゃあ、僕もはじめよう」と野球をすることになったんです。小学校、中学校とも強いチームで、中学校では全国大会にも出場しました。

「陸上」がやりたい

中学校入った時、兄が陸上部の駅伝に「助っ人」として出場していたのを見てうらやましくて。僕もやりたいとずっと思っていました。なので、陸上部の子には「足りなかったら言ってね」とお願いしていたんです。念願叶って、中学3年生の時に山口県で開催された中学校の全国大会で、駅伝のチームとしては出場できませんでしたが、本戦の後にある個人レースに開催地特例の県選抜10人の1人として選ばれ、走ることができたんです。この経験で「陸上って面白いな」、「高校に進学したら陸上をやろう」と思いました。でも結局は、中学の時に一緒に勉強していた子が、同じ高校に合格して「よし野球やろうか」ってぼそっと。僕もつい「OK、OK!」みたいな。そんなノリで高校でも野球を続けることになりました。と同時に、心の中では「大学で陸上やろう」とも決めて。高校野球の練習はきつかったですが3年間やりきって、いよいよ大学で陸上をはじめることなりました。

大学から陸上を始めることもあって、当初は中四国で戦えるレベルを目標にしていましたが、大学2年生の時に中四国のインカレで優勝して、初めての国体で7位入賞しました。3年生では、全国インカレで5位、国体では800mの一つの壁である「1分50秒」という記録を突破して、3位に入ることができました。とても有名な選手が周りにいる中で「自分は、なんでこんなところにいるんだろう」という思いでスタートラインに立って、走っていたのを覚えています。

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SFCで「スポーツまちづくり」を知る

生まれてから22年間ずっと山口にいて、山口大学では仲間にも恵まれた生活で「お前はずっと山口だろう」と言われてきましたが、僕が慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)の大学院に行くとなって皆に「えっ関東?」と驚かれました。

大学院の合格が決まった後、スポーツビジネスが専門の村林裕教授にお目にかかり、「君の力になると思うよ」と『スポーツのちから』という本を紹介してもらいました。スポーツによるまちづくりと言えば、スポーツをやることで、外から地域に人が来て経済効果が生まれました・・・という話題ばかりだと思っていましたが、地域に根付く相互援助の習慣がスポーツ振興に影響をもたらし、小さなまちから世界で活躍する選手を輩出している事例など、全国でいろいろな取り組みがあること、そして地域の中でスポーツと人と人がつながるという「目に見えない」部分との相乗効果が生まれているというのが面白いというか。これから色々知識を入れていかないといけないな、と思ったんです。

何かヒントがほしいと思って参加した「地域おこし研究員」の説明会で、新潟県三条市の野球スタジアムの指定管理をする地元企業の取り組みを研究された先輩の話や秋田県能代市での「バスケのまちづくり」の実践を聞いて、こういうことが「スポーツまちづくり」の研究なんだなって。ぼんやりとした研究への意識も「スポーツまちづくり」で進められれば・・・と転換していきました。

近いからではなく、面白いから来たくなる場をつくりたい

三条市では、所属する大学院プロジェクトの先輩である松橋崇史さんと「三条パール金属スタジアム」の指定管理者を務める(株)丸富が共同で企画した「大学野球サマーリーグ」(東京六大学野球連盟や東都大学野球連盟に所属する6つの大学野球部によるリーグ戦。地元の大学や高校とも交流試合を行うなど、地域貢献プログラムも展開している)が毎年行われているんです。それを参考に、「陸上版サマーリーグ」ができないかと思っています。陸上も、大学の対抗戦になると出られる選手と出られない選手がいます。出場する時に着る正式なユニフォームを4年間一度も着ないで終わることもあるんです。高校野球で言うと、一回も背番号もらえないみたいな。大学野球サマーリーグのように、選手たちがユニフォームを着て活躍できる機会や個人でなくチームで戦う経験から、「自分が頑張んなきゃ」という気持ちや、「あ、あいつ頑張ってんな、俺もやんなきゃな」という意識が生まれると思うんです。そういう取り組みが陸上にも必要なのかなと思っています。

三条市は新幹線で2時間弱の距離にあるんですが、近いから参加するのではなくて、北は北海道、南は沖縄から・・・と言うように、遠くてもこれがあるから、面白いことやっているから集まる、みたいな取り組みをつくりたいと考えています。

陸上が、スポーツをはじめるきっかけになるように

競技大会の中でも、自己記録を算出するための「記録会」は、各都道府県の陸上競技会に登録することが必要で、一般の方々は出場することができません。登録料が必要な都道府県もあって、一度は引退したけど競技を続けたい人には負担になることもあります。こうした本格的な試合には出ないけど走り続けたい人や、経験がない人でも出場できる記録会ができないかと考えています。アスリートは、良い記録を出すために日々練習をするので、結果が出るとさらに頑張ろう、という気持ちになります。経験がない人にとっても、正確なタイムを計測することが日常的になれば、「これだけ自分は走れるんだ」、「運動しないとまずいな」と自分の状態を知って目標を立てたり、仲間と切磋琢磨したり、そうして運動を続けていくことで、地域の競技力の向上につながるんじゃないかと思っています。

陸上には、「走る」「飛ぶ」「投げる」というスポーツの基礎的な動きが含まれています。僕は野球から陸上を始めたので逆ですが、野球をしていた頃から走ることは得意だったので、「俊足巧打」なんて言われていました。なので、陸上をすることで、走ることに自信が持てたとか、投げることが得意になったなど、他のスポーツに関わる人が増えてほしいと思っています。また、三条で開催される様々なスポーツ教室を陸上競技場で開催することで、今までとは違う競技場の使い方も見えてくるのではないかと思います。アスリートが地域と関わることで競技者としてもうまくいくし、地域の競技力や雇用、地域の人同士がつながるなど、相乗効果が生まれる仕組みを考えていきたいです。

「それ、できるよ。やろう」と言ってくれる人と共に

地域おこし研究員になる前に、何度か三条市へフィールドワークに訪れました。「三条パール金属スタジアム」の運営管理をしている(株)丸富の代表 柴山昌彦さんは、三条市の旧下田村地域のまちづくりを担うNPO法人ソーシャルファームさんじょうの代表もしていて、三条の様々なスポーツの取り組みを行っているんですが、僕がこんなこと考えていて、やってみたいんですって話したら、すぐに「それ、できるよ。やろう」って言ってくれて。いろんな方ともお話させていただいて、本当に実現できるかもしれない・・・と思ったんです。

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最後は自分で決断して研究も実践も進めていくわけですが、これから柴山さんのような地域のステークホルダーと一緒に活動していくことで、自分がこうなりたい、こうしたい、という意志を持って、それに向かっていけそうかなって思っています。良い意味で、地域おこし研究員の活動を終えるときには、今の自分じゃなくなっているように思います。そこにいることで導いてもらえる、そんな関係の中で研究していきたいと思います。

(2017.12.18)

参考